トイプーやコーギー、シュナウザーなどの犬種の中にはしっぽが短い子がいます。
これは生まれつきではなく、生後間もなくしっぽを『切られている』(断尾)からなのです。
ボクサーやドーベルマンなどの犬種に至ってはしっぽだけでなく耳まで短く切られている(断耳)子もいます。
これらの行為は未だ日本で行われている慣習であり、皆さんはどう感じますか。
今回は犬のしっぽを切る(断尾)、耳を切る(断耳)について、詳しく解説されているニュースをもとに、当サイトの情報も交えながらこれらの理由について解説します。
犬の断尾や断耳(ドッキング)は西洋ではほとんど行われていない事実
日本ではしっぽを切られた犬たちをよく見かけますよね。
トイ・プードルやコーギー、シュナウザーやヨークシャーテリア、ジャックラッセルテリアなど…
とてもたくさんの犬種に渡って、しっぽが短い子がいます。
しかし本来は長くてふさふさしたしっぽを持っていることを知っていましたか。
その風習は古く西洋のものでありました。
これらの犬種はいずれも西洋から輸入されてきた犬種です。
西洋ではもともと猟犬や牧羊犬として犬は人間のために働き、共存してきた関係があります。
そこで、牛や羊に踏まれたりしないために断尾や断耳(ドッキング)が行われてきたと言われています。
しかし歴史や生活スタイルの変化とともに、西洋ではほとんど断尾や断耳(ドッキング)が行われることはなくなりました。
それでもなぜか当たり前のように日本ではこうした行為が未だ行われています。
一体なぜでしょうか。
日本ではなぜ未だに犬のしっぽを切るのか
日本では未だに犬のしっぽや耳を切る行為が行われています。
それはいったいなぜでしょうか。
ニュース記事では、こうした理由は
・ 日本人の西洋や純血種への憧れやこだわり、犬種標準を守ろうという真面目さ
・ 動物に関する考え方の国民性
であると解説しています。
西欧では、長い歴史の中で犬という動物を作りだし、犬種として確立させてきました。そのために「管理」をおこなってきました。また、狩猟民族であり、自然に対して、“克服し、コントロールして管理する”という考え方を持っています。一方、日本人は農耕民族であり、“自然=神様”につながり、“人が“管理するもの”ではなく“付き合っていくもの”というのが古代からの考えにあります。動物も自然の一部とも考えています。
(中略)
日本では、本来の文化の中で生まれ育った風習的なことではなく、「この犬種はこういうものである」という犬種標準という概念も犬とともに輸入したので、変えることを考えていないということや、純血種への憧れやこだわりがある中で、現在も行われ続けています。
要約するとこのように考えることができそうです。
・ 西洋では歴史的な背景として『犬のしっぽや耳を切る』行為が犬の安全のために必要な行為であった。
・ しかし現在はこうした行為を行う必要はないため、断尾や断耳(ドッキング)が行われることはなくなっていった
・ 西洋は動物は『管理するもの』、日本は動物は自然と同じように『付き合っていくもの』という考え方がある
・ 日本人は西洋に憧れがあり、しっぽや耳が切られた状態が『犬種標準』であるという考えが根付いているため、昔からの風習が現在に至るまで続いている
もちろんこの見解がすべてではないと思いますが、西洋ではすでに行われなくなった行為が日本では今なお続いているということは確かな事実です。
犬のしっぽや耳を切ることは『百害あって一利なし?』
元々は犬たちを脅威から守るために行われてきた断尾や断耳(ドッキング)ですが、現代においてもこうした行為のメリットはあるのでしょうか。
記事ではこのように説明されています。
――ドッキングのメリットや必要性、デメリットやリスクを教えてください。
メリットや必要性は、これまで説明してきましたように、過去には狩猟や牧羊のためにはあったと言えます。また、現在でも狩猟や牧羊に従事する犬にはメリットかもしれません。ただ、ペットの犬としてはメリットや必要性はありません。あえて言うと、断尾はお尻周りが汚れにくいということはあるかもしれません。
デメリットを理解するには、犬の尾が何のためにあるかを理解する必要があります。尾は走る際には体のバランスをとるのに役立つ面があります。また、どなたもご存じの通り、尾を振ることは、感情表現でもあり、これは犬同士でも役立っています。尾が短くなることで、犬同士の「会話」や意思疎通に支障が出ることはあり得ます。
リスクは、前述しましたようにブリーダーが処置をする場合には、感染のリスクがあります。獣医師が行う断尾についても生後1週間以内であっても痛みを感じていないとは言えず、無麻酔で切断することは大きな苦痛を与えている可能性があります。
このようにリスクはあってもメリットがないということが明言されています。
犬のしっぽは感情表現の面においてもとても重要な役割を果たすため、私たち犬の飼い主にとっても大変重要です。
形式面や美容目的での断尾や断耳を行うことが今なおあるようですが、形式面はともかくこれらの行為は『美容』と言えるでしょうか。
誰がどのような方法で犬のしっぽや耳を切るのでしょうか
また、犬のしっぽや耳を切る行為はいつ、誰が、どのような方法で行うのでしょうか。
痛みや感染症などのリスクはないのでしょうか。
――どのような場所、方法でドッキングが行われているのでしょうか。
断尾と断耳では異なります。断尾では、動物病院などで獣医師が行う場合とブリーダーが行う場合があります。獣医師が行う場合には生後1週間以内に無麻酔で尾を切断します。生後1週間以内では痛みを感じにくいとされているからです。
ただ、科学的根拠は薄く、痛みを感じていないのではなく、表現しにくいだけというのが正しいと考えられます。ブリーダーで行う場合には、尾の根元を輪ゴムやヒモできつく縛り、血行を遮断して、尾を壊死(生きている体の一部を死なせること)させます。壊死した尾は、自然と落下します。
獣医師法では、「業」としての動物に対する獣医療行為は、獣医師以外はできないとしていますが、人が自ら保有する動物に対して獣医療行為を行うことは制約されていません。しかし、場合によっては、動物の管理及び愛護の法律で動物虐待をみなされる場合があります。
断耳は、垂れている耳をピンとたたせることが求められます。成長してから全身麻酔医で耳をカットして整形しますので、動物病院で獣医師が行います。かなり高い技術が求められますし、ドーベルマンなどごく一部の犬種でしか行われず、トラブルになるケースも多いため、現在では断耳ができる獣医師は少なくなっています。
特にブリーダーが処置を行う場合は感染症のリスクがあること。
生後は痛みを感じにくいとされ、ドッキングは生後間もなく無麻酔で行われるが、本当は苦痛を与えている可能性があること。
そして、犬のしっぽや耳を切ることは体重バランスにも与え、犬同士・犬と人間とのコミュニケーションに支障をきたす可能性もある。
引用でも詳しく解説がされていますが、デメリットやリスクはあってもいいことは一切ないと言えるのではないでしょうか。
当サイトとしても犬のしっぽや耳を切るという行為には反対しています。
断尾や断耳(ドッキング)が行われる犬種について
日本は農耕民族であり、犬を使役し管理してきた歴史はありません。
そのため、秋田犬や柴犬などの日本犬種では、こうした行為は行われていません。
それでは一体どのような犬種がしっぽや耳を切られる犬種なのでしょうか。
――ドッキングは、日本においてどのような動物のどの部位を対象に行われていますか。
柴犬や秋田犬などを除き、チワワやトイプードルなどは、全て海外から日本に持ち込まれた犬種です。そのため、前述のような歴史的な経緯を踏まえてのことになります。つまり、西欧で確立された「犬種」の特徴に従うために断耳や断尾が行われています。
小型犬種では、トイプードル(断尾)、ヨークシャーテリア(断尾)、シュナウザー(断尾、断耳)、ミニチュアピンシャー(断尾、断耳)、ジャックラッセルテリア(断尾)などです。指の数も多い場合には切断することもあります。
中型犬では、ウエルシュコーギーベングローブ(断尾)、コッカースパニエル(断尾)、大型犬では、ドーベルマン(断尾、断耳)、ボクサー(断尾、断耳)、エアデールテリア(断尾)などです。このように横文字の犬種が並ぶのは、前述の歴史的理由からです。日本犬では、断尾や断耳をする犬種は基本的にはありません。
やはり西洋から輸入されてきた犬種が該当するようです。
西洋と日本の動物に対する考え方や価値観の違い
ニュース記事では、断尾や断耳という話題からさらに踏み込んだ形で、西洋と日本における、動物に対する考え方や価値観の違いにも触れています。
近年、西洋諸国では、アニマルウェルフェア(動物福祉)という考えが浸透してきています。これは、日本人にはなかなか説明しにくい考え方です。犬や猫などペットだけではなく、動物園にいる動物や肉として食べる牛や豚、鶏に至るまで対象とされる考え方です。
簡単に言いますと、生きている限りはできるだけ苦痛なく快適な生活を保障する、命を奪う必要がある際には苦痛が無いように行うということで、「管理」が根底にある考え方です。
日本では、「動物愛護」という言葉が広く用いられていますが、アニマルウェルフェアは動物愛護ではありません。愛護の定義も難しいですが、愛護は言葉の通り、愛し護ることですので、いかなる理由があっても命を奪ってはいけないということにつながり、現在の殺処分ゼロの考えに至っています。これは動物の「管理」とは異なっています。
西洋では動物を管理するという考えが歴史的背景も含め広く普及しています。
そうした考えは、ペットとして飼育される動物や、観賞用・食用としての動物に至るまで、生命がある間は『苦痛を与えない』ということに大きく焦点が当てられているようです。
一方の日本では動物を管理するという考え方よりは動物を『愛護する・保護する』という考え方が色濃く出ています。
そのため、日本では『かわいそう』『あるがままがよい』という理由で避妊や去勢手術をしない飼い主も多く存在します。
断尾や断耳を行っている一方で、飼育できない子が生まれてしまう状況も作り出しているという何とも言えない矛盾感が漂っています。
読者の皆さんはこの事実をどう思われますでしょうか。
ペットショップの存在
西洋には個体を販売するペットショップはありません。
日本では当たり前のようにペットショップで生体販売されています。
ペットの生体販売は産業化されており、そうした過程の中で機械的あるいは顧客のニーズから断尾や断耳が行われていることもあると記事では指摘されています。
西洋の水準と比べて私たち日本で生活する人々は、ペットに関する基礎知識の水準が低いと感じます。
この記事を読むまで、【 コーギーのしっぽは生まれつき短い 】と思っていた方もいるのではないでしょうか。
ペットショップに流通する過程でも断尾や断耳の行為は行われており、私たちはお金さえあれば(お金がなくても今ではローンでも買えるという異常な現実)簡単にペットを飼うことができるのです。
私たちは動物を飼うときにはこうした事実もあるということをよく理解しておく必要があります。
近年の日本における動物を取り巻く事情の変化
記事では最後に動物愛護法の改正についても触れられています。
直近の動物愛護法改正は、これまでにないほど踏み込んだ改正だと注目されていますが欧米諸国レベルの水準までには至っていません。
しかし一歩一歩着実に動物たちを取り巻く環境は向上しているため、これからもこの流れは加速してほしいと思います。
記事ではこのような説明がされています。
――日本のペット事情において、ほかに課題に感じられていることがあれば教えてください。
昨年、動物の愛護及び管理に関する法律が改正されました。今回の法改正では大きな変化が2つあります。1つは動物虐待に対する罰則強化と対応強化です。対応強化の部分では、獣医師に虐待が疑われる動物を診察した際の通報義務が課せられました。
また、行政機関には多頭飼育など不適切な飼育に対する指導権限の強化が行われました。もう1つはブリーダーやペットショップなど動物取扱業者への規制強化です。特にブリーダーを対象として、安易な繁殖を抑える基準や飼育管理のための厳しい基準が適用されることになります。
これらは、毎日のように報道されている不審死を含めた動物虐待を疑う事件への対応や殺処分ゼロに関連して安易な動物の飼育防止と保護動物の譲渡促進がその背景にあります。しかし、これらの根底には、人気犬種を煽るマスコミなどの在り方や流行に扇動される国民の動物に対する意識の低さ、動物が商品として流通し、売買されている現状と「動物=自然」と考える国民性との矛盾など、広く大きな問題があります。
単に「かわいそうだから」ということだけでは、動物を巡る問題の解決は難しく、家族同然となった犬猫などのペット、食べるなど人が利用するための家畜の扱い方、増えすぎて農作物の食害が問題となっている野生動物との関係など、本質的な「人と動物、人と自然」との関係を考え、議論しなければ、感情的な議論では永久に解決することはないと考えています。
なぜトイ・プードルやコーギーのしっぽを切るのですか|犬の断尾や断耳行為がなくならない理由とは まとめ
いかがでしたでしょうか。
どう考えても犬たちのしっぽや耳を切るという行為は今の時代にはそぐわないということが言えそうです。
言葉で主張できない動物たちだからこそ、私たち人間がしっかりと彼らの主張をくみ取って接していくことと、犬を飼育するということについてのリテラシーを上げていくことが大切だと感じます。
今回ご紹介したこちらの記事は情報量も多く、参考になるものでした。
本記事を読んでもっと知りたいと思われた方は実際に記事を読んでみて下さいね。
■ なぜコーギーもトイプーもしっぽ切る? 断尾・断耳行為が日本で消えない理由「メリットなく、リスク伴う」
最後に、当サイトでも動物愛護法の改正については、解説の記事をいくつも掲載しています。
興味がある方は覗いて行っていただけると嬉しいです。
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