2019年6月に動物愛護法が改正されました。
その中で最も話題に上る改正の内容、それが【 数値規制 】と呼ばれるものです。
数値規制はその名の通り、動物を守るための具体的な『数値』が設定されることになります。
一見すると動物を保護するためにとても有効なルールですが、今この実効性について疑問が持たれています。
この記事では改正動物愛護法の最大の焦点である数値規制が結局どうなったのか、その実効性はどれほど期待できるのかということについて深く切り込みます。
そして数値規制はブリーダーやペットショップにどのような影響を与えるのでしょうか。
ペット先進国と言われる欧州の基準とも比較しながら、改正動物愛護法における数値規制の中身を徹底解説します。
- 1 動物愛護法の改正ポイント
- 2 動物愛護法改正による【 数値規制 】とは
- 3 数値規制をめぐる派閥と対立
- 4 ペット業界派閥の驚きの提案により数値規制の議論は激化
- 5 紆余曲折を経て数値規制の内容は固まってきている
- 6 数値規制(改正動物愛護法)のポイント①: 生活スペース
- 7 数値規制(改正動物愛護法)のポイント②: 飼育員1人あたりの飼育可能数
- 8 数値規制(改正動物愛護法)のポイント③: 繁殖回数の制限
- 9 数値規制(改正動物愛護法)のポイント④: 病気の予防
- 10 数値規制(改正動物愛護法)のポイント⑤: 展示や輸送方法
- 11 数値規制によるブリーダーへの影響は
- 12 数値規制をしても悪徳業者はルールを守らない
- 13 ペットショップをなくせばいいのではという意見
- 14 一般の私たちこそ意識改革を
- 15 ※追記 わたしたち人間が数値規制の中で生活するとこうなります
- 16 日本一分かりやすい【 数値規制 】 まとめ
動物愛護法の改正ポイント
動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)とは
動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)は1973年に制定されました。
動物に関する事業者や飼い主に対する義務や基準を規定しており、人間と動物が共生して豊かな社会を実現することを目的にしています。
これまでに4度改正が行われており、最新の法改正は2019年6月に行われています。
2019年の改正で注目すべき3つのポイント
2019年6月に改正された動物愛護法ですが、動物を虐待から守る観点からかなりの変更が加えられました。
注目すべきポイントはこちらの3つのポイントです。
【 動物愛護法改正 3つのポイント 】
① 8週齢規制
② 虐待の厳罰強化
③ 数値規制
1つ目のポイントである8週齢規制とは、犬・猫が生まれてから8週齢(56日)を超えるまで販売(親元から引き離し)してはならないという規制です。
犬・猫に社会性を身に付けさせ、健康な心と体を養うことを目的として基準が設けられました。
2つ目のポイントである虐待の厳罰強化については、動物の虐待に関する罰則規定が従来に比べ厳格化されました。
そして3つ目のポイントが本記事でご紹介する数値規制となります。
数値規制以外の改正動物愛護法のポイントは別の記事でまとめています。
本記事の最後にリンクを貼っておきます。
動物愛護法の改正時期を施行時期
4回目となる動物愛護法の改正は2019年6月に発布されました。
改正から既に1年以上経過している現在でもこれほどまでに注目されているのには理由があります。
それは、改正内容の運用開始時期は『段階的』に行われるからです。
以下が改正動物愛護法の公布時期と段階的な運用開始のスケジュールとなります。
改正自体は2019年6月に既に終わっており、3つの規制(8週齢規制、数値規制、マイクロチップの義務化)以外は全て運用が開始されています。
逆に残された3つの規制については、動物事業者への影響が大きいことから運用開始時期が段階的に開始することになっています。
今回の改正動物愛護法の中でも最大の焦点が集まっている基準、それが【 数値規制 】です。
数値規制には様々な議論がなされており、揺れに揺れてきた規制となります。
数値規制の運用開始は2021年6月1日から開始されることが決定されています。
これから数値規制に関する議論の焦点と、具体的な内容について見ていきましょう。
ここからが本題となります。
動物愛護法改正による【 数値規制 】とは
数値規制とは
【 数値規制とは 】
犬や猫の繁殖業者に対して定められる基準で、以下の項目に関する具体的な数値を伴ったルールです。
- 飼養施設の構造や規模
- 従業員の数
- 環境の管理
- 疾病への措置
- 展示または輸送の方法
- 繁殖方法や回数
数値規制の目的
数値規制の最大の目的は一言で言うとこのことに尽きます。
【 数値規制の目的 】
悪徳ブリーダーの撲滅
数値規制の最大の目的は、パピーミル(子犬製造工場)と揶揄される悪徳ブリーダーを撲滅することです。
規制内容が決まっていないのはなぜですか
このように日本中の動物愛護家や動物事業者から注目を集めている数値規制ですが、改正から1年以上経ってもまだ具体的な数値が最終決定していません。
動物愛護法の改正は2019年6月に終わっているのに、数値規制は2020年になっても決まっていない。
これって変だと感じている方も多いと思います。
動物愛護法は政令と呼ばれる【 法律 】であり、2019年6月に既に改正が終わっています。
数値規制の基準元となる条文は第21条です。
他の法律でもそうですが、法律に関する具体的な取り決めルールなどは、別途検討して設定されることがあります。
数値規制はその一環であり、環境省が公布する【 省令 】というレベルの基準となります。
つまり【 数値規制 】は動物愛護法という法律(政令)に基づいて取り決められる省令ということになります。
そして数値規制は現時点で策定中となります。
数値規制をめぐる派閥と対立
これまで説明してきたように、数値規制は環境省により制定されます。
現在の環境省大臣は小泉進次郎氏です。
つまり数値規制の最終決定権は小泉大臣にあるということです。
数値規制はこれまで何度も環境省の検討会で議論されてきました。
検討に当たっては省内だけでなく、業界団体や動物愛護団体、及びパブリックコメント(一般国民の意見)の意見も参考に広く検討をされます。
今回の数値規制の具体的な数値設定に当たっては、環境省を間に真っ向から対立する2つのグループがあります。
一方のグループは『犬猫適正飼養推進協議会』(会長:石山 恒氏)です。
もう一方のグループは『犬猫の殺処分ゼロを目明日動物愛護議員連盟』や『動物環境・福祉協会Eva』などです。
こちらのグループは超党派の議員で構成されており、動物愛護活動家としても有名な杉本彩氏もアドバイザーとして参加しています。
杉本彩氏は公益財団法人 動物環境・福祉協会Evaの協会長でもあります。
この記事では話を分かりやすくするために、『犬猫適正飼養推進協議会』を『ペット業界派』、杉本彩氏側のグループを『動物愛護派』としています。
石山恒氏率いる『ペット業界派』は、日本のペット業界を守らなければならない立場から、数値規制に関しては慎重な考えを示しています。
言い換えると、数値規制のレベルを厳しくしない考えです。
一方の杉本彩氏らが活動する『動物愛護派』は、動物の虐待防止・悪徳ブリーダー駆逐の観点から、数値規制については厳しい規定を定めるように政府に嘆願をしています。
ペット先進国と言われるドイツやイギリスなどの欧州の水準と同程度になることを目指して活動をしているのです。
ペット業界派閥の驚きの提案により数値規制の議論は激化
数値規制は色々な規定がありますが、中でも注目されているのは『犬・猫の飼育スペース』に関する取り決めです。
つまり、ブリーダーやペットショップで飼育する犬・猫の生活スペースの広さを指しています。
数値規制の議論に一気に火が付いたのは、石山恒氏率いるペット業界派(犬猫適正飼養推進協議会)から提案されたこちらの数値案です。
【 犬の生活スペース 】
高さ: 体高×1.3
幅: 体高×1.1
何かの間違いではないでしょうか。
そもそも試算の基準が『体長』ではなく、『体高』になっているところにも非常に違和感があります。
ダックスフンドなどの体長が長い犬種はどうなるのでしょうか。
ちなみにペット業界派の石山恒氏は『犬猫適正飼養推進協議会』の会長でもあり、ペットフード協会の会長でもあります。
さらに、ペットフード業界の大手であるマースジャパンの副社長も務められている方です。
石山恒氏は欧州の数値規制に該当する基準には、科学的な根拠がないとして上記の案を提案されたようです。
根拠がないとしても、欧州よりも厳しい基準を検討できなかったのでしょうか。
余談ですが犬猫適正飼養推進協議会には、以下の組織が会員として名を連ねています。
なんと、『日本獣医師会』も会員になっています。
今回の提案内容は、日本獣医師会も公認していたのでしょうか。
紆余曲折を経て数値規制の内容は固まってきている
このように数値規制の設定については波乱が巻き起こっています。
一般の動物愛護家からも数値規制の基準は厳しくすべきという意見がほとんどです。
ペット業界派の意見が尊重され、何の意味も持たない規制が制定されるのではという危惧の声も多数上がっています。
しかしながら2020年8月の環境省での検討会では、欧州に近い水準の案が取りまとめられました。
今回の記事はその内容に基づいたポイントをご紹介します。
数値規制(改正動物愛護法)のポイント①: 生活スペース
ケージ型の生活スペースのケース
数値規制の議論で最大焦点になっていた『生活スペース』に関する基準ですが、基準は大きく2つあります。
1つ目はケージ型の生活スペースです。
もう1つは運動スペースも含まれた運動スペース一体型です。
ケージ型の生活スペースはこのように定義されています。
【 数値規制: ケージ型の生活スペース 】
■ 犬の場合
縦: 体長の2倍
横: 体長の1.5倍
高さ: 体高の2倍
■ 猫の場合
縦: 体長の2倍
横: 体長の1.5倍
高さ: 体高の3倍
縦: 体長の2倍(60cm)
横: 体長の1.5倍(45cm)
高さ: 体高の2倍(40cm)■ 猫の場合
縦: 体長の2倍(1m)
横: 体長の1.5倍(75cm)
高さ: 体高の3倍(75cm)
運動スペース一体型のケース
次に運動スペース一体型のケースです。
運動スペース一体型は、2頭以上を同一スペースで飼育することを前提に定義されています。
こちらが数値基準です。
【 数値規制: 運動スペース一体型の生活スペース 】
■ 犬の場合
『2頭まで』
ケージ型の床面積の6倍
体高の2倍の高さ
『3頭以上』(1頭追加ごと)
ケージ型床面積の3倍を追加
■ 猫の場合
『2頭まで』
ケージ型の床面積の2倍
体高の4倍の高さ
2つ以上の棚 × 3段以上の構造
『3頭以上』(1頭追加ごと)
ケージ型1頭分の床面積を追加
【 数値規制: 運動スペース一体型の生活スペース 】
■ 犬の場合
縦: 体長の4倍
横: 体長の4.5倍
高さ: 体高の2倍
■ 猫の場合
縦: 体長の2倍
横: 体長の3倍
高さ: 体高の4倍
2つ以上の棚 × 3段以上の構造
【数値規制: 運動スペース一体型の生活スペース 】
■ 犬の場合(2頭あたり)
縦: 体長の4倍(1.2m)
横: 体長の4.5倍(1.35m)
高さ: 体高の2倍(40cm)
■ 猫の場合(2頭あたり)
縦: 体長の2倍(1m)
横: 体長の3倍(1.5m)
高さ: 体高の4倍(1m)
このような結果となりました。
ペット先進国との基準比較
続いてペット先進国と言われる欧州と比較をしてみます。
欧州は大型犬の割合が高いので、日本のサンプル基準も大型犬(ラブラドール・レトリーバー)にしています。
先ほどの運動スペース一体型の数値基準を元に、1頭あたりに必要なスペースを算出しました。
その比較結果がこちらです。
犬の場合は意外にも欧州各国に引けを取らない結果となりました。
ただし、小型犬や中型犬のケージ型スペースでは、何の問題もなく快適であると断言はできないでしょう。
猫については、イギリスと近い水準でしょうか。
ドイツは規制がありませんが、それ以外の3国と比べても同水準とは言えないことが分かりました。
ケージの材質等に関する基準
悪徳ブリーダーに飼育されている繁殖犬・繁殖猫は、冷たい床が冷たい金網であることが多いです。
あれば糞尿が床に残りにくく、動物が汚れにくく管理しやすいといった理由が挙げられます。
今回の数値規制では、生活スペースのケージの材質についても規制が盛り込まれました。
その内容がこちらです。
・ ケージや訓練場にサビや破損がないこと
数値規制(改正動物愛護法)のポイント②: 飼育員1人あたりの飼育可能数
数値規制の2つ目のポイントは、飼育員1人あたりの飼育可能数です。
欧州でもこれに準ずる規制がある国とない国があります。
比較するとこのようになりました。
【 数値規制: 飼育員1人あたりの飼育可能数 】
『日本』
犬: 15頭(繁殖犬)、20頭(販売犬)
猫: 25頭(繁殖猫)、30頭(販売猫)
※ 環境省令で定める基準等の範囲内で、都道府県等が飼養頭数の上限値を減少又は増加させる規定を検討する
『イギリス』
犬: 成犬20頭程度
猫: 規制なし
『フランス』
犬: 規制なし
猫: 規制なし
『ドイツ』
犬: 10頭(繁殖犬)
猫: 規制なし
数値規制(改正動物愛護法)のポイント③: 繁殖回数の制限
繁殖の回数や方法
数値規制の中でも生活スペースの議論と同じくらい取り上げられる項目、それが繁殖回数や繁殖方法についての規制です。
現在検討されている規制内容はこのようになります。
【 数値規制: 繁殖回数・繁殖方法】
『日本』
犬: 6歳&6回まで(メスの交配)
猫: 6歳まで
犬・猫ともに、帝王切開は獣医師による『出生証明書』の提出を義務化
『イギリス』
犬: 1歳以上(メスの交配開始年齢)
出産は年1回、生涯6回まで
優良基準として、8歳以上のメスの交配禁止
猫: 繁殖業に対する制限なし
犬・猫ともに帝王切開は2回まで
『フランス』
犬・猫ともに2年間で3回まで
『ドイツ』
犬: 規制なし
猫: 規制なし
6歳までに6回出産するためには
メス犬の場合は初めての発情期を迎えるのが生まれてから半年ほどたった頃です。
生まれて初めての発情期での繁殖は出産頭数が少ない傾向にあるため、繁殖業者の多くは2回目以降の発情期から繁殖を行うことになります。
初めての発情期を迎えた後は、半年ごとに発情期を迎えるというサイクルになります。
犬の出産にかかる期間は2ヶ月程度と言われており、6歳までに6回出産を経験するとなると、1歳から6歳までの5年間で6回出産することになります。
上のデータにあるように、1歳から基本的に毎年出産を繰り返すことになり、その内1年に2回出産を行うことがあるということです。
毎年出産させるのは犬の体に負担が掛かると思いませんか。
出産回数と出産方法が甘いと言われるワケ
今回の改正動物愛護法に基づく数値規制により、犬の場合は6歳までに6回、猫の場合は6歳までという規制が設けられることになりそうです。
猫に回数制限が設けられていないことが大変残念です。
しかし考えてみれば、今まで規制がなかったということに逆の衝撃を受けませんか。
動物の体はおもちゃではありません。
人間と同じ大切な命が宿っているのです。
当サイト(ワンだふるライフ)の見解としては、フランスと同程度(犬・猫ともに2年間で3回まで)基準まで規制を引き上げて頂きたいところです。
しかしそれは流石に現実的でないことは分かっているので、4歳までに4回と設定して頂きたいと考えます。
また、帝王切開は出生証明書が必要になるというルールが設けられていますが、証明書ではなく帝王切開の回数を制限する方が先に設けるべき基準ではないでしょうか。
イギリスの場合は犬・猫ともに帝王切開による出産は2回までと定められています。
日本もこれに準じた基準を設置すべきだというのが当サイトの見解です(できれば帝王切開は1回まで)
数値規制(改正動物愛護法)のポイント④: 病気の予防
従来の動物愛護法において動物の健康管理に関する規定は具体的な数値もなく、努力目標のような内容になっていました。
しかしながら、今回の改正で年1回の健康診断の受診が義務化されることになりました。
健康診断の受診が義務化されることにより、動物たちの健康状態が改善されるだけではなく、虐待などの発見及び通報回数が増えることが期待できます。
改正後の動物愛護法の第41条の2により、獣医師の通報が義務化(これまでは努力義務)されることになりました。
この改正は既存の法律が完全に改良されたと言えるでしょう。
数値規制(改正動物愛護法)のポイント⑤: 展示や輸送方法
動物愛護法の改正に伴う数値規制の最後のポイントは、動物たちの展示や輸送方法に関する規定です。
・ 輸送後は2日間以上様子を観察すること
数値規制によるブリーダーへの影響は
今回の数値規制によってかなり悪影響を受けるブリーダーは存在すると考えられます。
悪徳ブリーダーは淘汰されるべきですが、真面目に頑張っている優良ブリーダーにとって数値規制はどのような影響があるでしょうか。
悪徳とは言えなくても現状が数値規制の対象になるブリーダーはかなりいることが想像できます。
例えば生活スペースに関する規定を守れていないブリーダーは、ケージの買い替えが必要です。
50頭飼育している犬舎で1万円のケージを買い替えた場合は50万円の出費になります。
また飼育職員1人あたりの飼育頭数についても、数値規制に引っかかれば人を増やすか飼育頭数を減らすことになります。
どちらにしてもコストが掛かるか収入が減るかということになります。
出産に関する制限も、6歳以上の成犬の行き場はどうなるのでしょうか。
そうなると、動物の遺棄や保健所への持ち込み、動物保護団体などの負担が増えることが想像できます。
日本の現状を考えると、法律を改正するだけで全てが改善されるとは言い切れないのが現実なのです。
数値規制をしても悪徳業者はルールを守らない
そもそも数値規制を敷いたとしても、悪徳業者はルールを守るようになるのでしょうか。
答えは恐らく『NO』でしょう。
数値規制の運用が始まっても悪徳業者をゼロにすることは不可能だと思われます。
どのみち悪徳業者がルールを守れないのであれば、動物愛護法を改正したり数値規制のような省令を設けることは意味のないことなのでしょうか。
その答えも恐らくは『NO』なのです。
まずは数値規制という既成事実ができることは、動物に関する人の意識に変化を与えます。
それこそがまず小さな第一歩ではないでしょうか。
また、改正動物愛護法では第25条で不適切な飼育を行っている者に対して勧告や立入検査は可能になりました(従来は立入検査は任意)
第41条の2でも獣医師による虐待発見時の通報が義務化されています。
そして何よりSNSがこれだけ発達している時代です。
悪徳業者に関する情報はSNSで大きく拡散・周知されることも期待できます。
一般消費者も一緒になって声を上げることが、悪徳業者撲滅に少しずつ繋がっていくことを期待したいですね。
ペットショップをなくせばいいのではという意見
数値規制の運用は、欧州に一歩近づいたと言えるでしょう。
その一方で欧州と日本の大きな違いは、ペットショップの存在です。
欧州には日本のようなペットショップは存在せず、このことが諸外国と日本の大きな違いです。
こんなに数多くのペットショップがあるのは世界でも日本だけだと言われています。
欧州では犬や猫を飼うなら保護犬や保護猫を受け入れることは常識であり、日本はペットショップで買うことがまだまだ常識です。
悪徳なブリーダーは悪徳なペットショップを通じて、乱繁殖させた子犬や子猫を販売しています。
ですから以前から日本のペットショップ(正確には生体販売)をなくすべきだという意見が根強くあります。
悪徳なブリーダーは繁殖した犬・猫を直接一般消費者に販売することは難しいです。
飼育環境を見せることもできませんし、販売するためには同じく悪徳のペットショップを利用することになります。
こうしたことが横行しているため、ペットショップ自体をなくせば悪徳業者の販売ルートが途絶えるため、結果として悪徳業者の撲滅につながるのではないかという意見があります。
確かにそのような意見は的を得ていますし、法律の改正よりも効果が高いことは簡単に想像できます。
しかし残念なことに現在の日本では生体販売を禁止するための仕組みをすぐに導入することは困難でしょう。
業界団体の猛反発を避けることはできないですし、表には見えない癒着や結託があるからです。
今回の数値規制についても、ペット業界用語派閥からあれだけの意見が出ていることを考えても、ドラスティックに変えることは現実的ではないと言わざるを得ません。
本当の意味での動物虐待防止、悪徳業者の撲滅にはまだまだ長い時間が掛かるはずです。
一般の私たちこそ意識改革を
このように数値規制ができたとしても、悪徳業者は悪いことを続けるでしょうし、悪徳業者の存在がゼロになることはないでしょう。
しかしながら、これだけ動物愛護法の改正・数値規制に関する議論が活発になっていることは良い傾向だと考えられるのではないでしょうか。
法律やルールができても、全ての問題がすぐに解決することはありません。
また真面目に一生懸命努力している動物事業者にとっても負担が増加することになり、真っ当な商売をしている人たちが損をする可能性もあります。
こうしたことをすべて解決する方法は存在しませんし、少しずつ前進していくほかないのでしょう。
ですから動物に関する事業を営んでいない一般消費者の私たちこそ、こうした情報に興味を持って自分の意見や行動に取り入れるべきではないでしょうか。
大切なのは意識の変化です。
意識が変化すればゆっくりですが問題は解決の方向に向かっていくものです。
私たち一人一人が関心を持っていくことがとても大切になります。
現代はインターネットですぐに情報発信ができる時代です。
火のないところに煙は立たないもので、悪いことをしているといずれ明るみに出ます。
今回の数値規制の制定、もかけがいのない動物たちの命を守るための大きな一歩です。
法律やルールには穴があるとよく言われますが、法的な実行力もさることながら、動物を愛する私たちにとっても意識を変えるきっかけになることを切に望みます。
※追記 わたしたち人間が数値規制の中で生活するとこうなります
今回ご紹介した数値規制について、よりイメージを持って頂けるよう、犬・猫の数値規制をわたしたち人間にあてはめた場合のシミュレーションをしてみました。
その驚きの内容はこちらをご覧下さい。
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あなたが繁殖犬なら、引退までこの生活に耐えられますか。
日本一分かりやすい【 数値規制 】 まとめ
長文になりましたが、動物愛護法改正に伴い最も注目されている【 数値規制 】についてお伝えしました。
今回の記事のまとめはこちらです。
・ 飼育スペースに関する規制は当初想定よりも改善されそうです
・ 犬の出産は6歳までに6回、猫は6歳までです
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