狂犬病ワクチンの予防接種はお済みですか。
狂犬病の死亡例は日本ではここ数十年ほとんどありませんが、狂犬病は発症すると100%死に至る大変恐ろしい病気です。
本記事では、狂犬病ワクチン予防接種の費用や時期、予防接種をしなかった場合など、狂犬病で気になるポイントを網羅しています。
狂犬病ワクチン予防接種と混合ワクチンの接種スケジュールも合わせてご紹介します。
狂犬病について
狂犬病は犬だけでなく人間など全ての哺乳類が感染するウイルス性の病気(人獣共通感染症)です。
ひとたび狂犬病を発症してしまうと治療方法はなく、100%死に至る大変恐ろしい病気です。
世界各地で毎年発症事例が見られ、WHO(世界保健機関)の発表によれば年間5万人以上が亡くなっています。
インドや中国などのアジア圏での発生が多いですが、アフリカ、欧州、北米や中南米など世界各地で見られます。
ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、日本、グアム、ハワイ、フィジー諸島は現在狂犬病の発生がない国です。
日本では1957年以降の国内発生は確認されていません。
日本国内での感染事例は海外で狂犬病に感染した犬から噛まれた渡航者による事例があります。
1970年のネパールからの帰国者1名と、2006年のフィリピンからの帰国者2名、2020年のフィリピンからの渡航者1名です。
狂犬病の感染経路について
狂犬病ウイルスを保有する犬、猫、コウモリなどの野生動物に咬まれたり引っかかれたりして、ウイルスが体内に侵入することで感染します。
キツネ、スカンク、アライグマ、マングースなどの多くの動物が感染源になっています。
人間から人間の直接感染は見られませんが、移植による感染の事例があります。
狂犬病の症状と発症を防ぐ方法
狂犬病の症状
狂犬病は発症するとほぼ100%死に至る大変恐ろしい病気です。
人間の発症にかかる時間は1ヵ月~3ヵ月と言われています。
発症初期は発熱、頭痛、倦怠感といった風邪のような症状が現れます。
その後興奮や不安状態、錯乱、厳格、攻撃的な状態、水や風を怖がる(恐水症、恐風症)といった脳炎症状を呈し、最終的に昏睡から呼吸停止し死に至ります。
狂犬病の予防法(暴露前予防接種)
人間が狂犬病に感染することを予防するためには、狂犬病ワクチン予防接種を受けることが有効です。
野生動物と接触する機会がある場合、医療機関が近くにない海外地域などへ渡航する場合などは、予防接種(暴露前予防接種)を受けるとよいでしょう。
狂犬病の予防法(暴露後予防接種)
狂犬病を発症している、あるいは狂犬病が疑われる動物に咬まれたり、唾液に接触した際に発症予防のために行う予防接種の事を暴露後予防接種といいます。
初回接種日を0日として、3日、7日、14日、30日、90日の計6回の接種をすることで狂犬病の発症を防ぐことができます。
暴露後ワクチンは、Ravipur(ラビピュール)という製剤が有名です。
狂犬病ワクチン予防接種について
狂犬病予防接種は、生後91日目以降の犬を対象として、年一回の接種が法律で義務付けられています。
狂犬病予防法により、飼い犬の登録(生涯一回)と毎年の予防接種が定められています。
【 狂犬病予防法が定める義務 】
・ 現在居住している市区町村に飼い犬の登録をすること
・ 飼い犬に年1回の狂犬病予防注射を受けさせること
・ 犬の鑑札と注射済票を飼い犬に装着すること
犬の鑑札と注射済票は各自治体で異なります。
狂犬病ワクチン予防接種の費用
狂犬病ワクチン予防接種は、動物病院や自治体が主催する集合接種会場(公園など)で受けることができます。
毎年3月頃に、居住地の自治体から狂犬病予防接種の案内が来ます。
費用は大体3,000円程度が目安です。
その他狂犬病予防注射済票の交付手数料が550円必要です。
狂犬病は感染後発症すると有効な治療方法がありません。
しかし、狂犬病ワクチン予防接種を行うことで、感染は防げなくても発症を予防することができます。
狂犬病ワクチンの予防接種による副反応(副作用)について
狂犬病ワクチンの予防接種は100%安全とは言えません。
農林水産省動物医薬品検査所の調査情報によれば、2015年の日本国内における狂犬病予防注射頭数:4,688,240頭のうち、18頭に副作用が確認されています。
割合にして0.00038%(10,000頭のうち、3.8頭)と非常に確率は低いですがゼロではありません。
副作用として一番多いのが嘔吐や下痢です。
また、犬の体がワクチンを異物として認識してしまう事で、発熱したり、消化器疾患が起こることもあります。
ワクチンに対してアレルギー反応が起こり、じんましんなどの湿疹が顔周りに現れることもあります。
一番恐ろしい副作用が、【 アナフィラキシーショック 】です。
狂犬病ワクチンに対して激しいアレルギー症状が起こることで、呼吸困難など重度の症状が見られます。
最悪の場合死に至ることもあるため、動物病院へ直行しなければなりません。
狂犬病ワクチンの予防接種で副反応(副作用)が起こる確率は決して高くはありません。
しかし、副反応(副作用)が生じた時にはすぐに動物病院へ連れていきましょう。
予防接種を受けた後は外出したりせず、万が一何かあった場合に備えてすぐに病院に移動できる状態にしておきましょう。
狂犬病の予防注射を打ち忘れたら
すでにお伝えした通り、狂犬病予防接種の接種時期は毎年4月~6月の間になります。
この期間の間に予防接種の注射を打ち忘れた時はどうしたらよいでしょうか。
この時期に予防接種をし忘れたとしても、必ず別の期間に予防接種を行うようにする必要があります。
4月~6月は市区町村の集団接種の時期であるため一般的にこの時期が注射を打つ時期と言われていますが、動物病院では年中予防接種を受けることができます。
狂犬病ワクチン予防接種をしなかったら
狂犬病ワクチンの予防接種は狂犬病予防法という法律で義務付けられているため、犬の飼い主は毎年必ず接種が必要です。
特に気を付けたいのは、引っ越しなどで飼い犬の居住地が変わった場合は、転居後30日以内に新しい居住地を管轄する自治体に登録(届け出)をしなければならないという点です。
狂犬病予防法は、飼い犬の登録と年1回の予防接種を義務付けており、違反した場合の罰則も設けられています。
さらに、予防接種後は【 注射済票 】が交付されますが、こちらも飼い犬へ装着しておくことが飼い主の義務となっています。
これらを違反した場合は、そのどれもが20万円以下の罰金刑の対象となり、注意が必要です。
狂犬病ワクチンと混合ワクチンの接種時期や値段について
子犬期~成犬期 混合ワクチンと狂犬病の予防接種プログラム
狂犬病ワクチンの予防接種と並行して接種することが多いのが、混合ワクチンです。
狂犬病ワクチンは生後91日目以降の子犬期から、年1回の接種が必要です。
混合ワクチンは、子犬期は2~3回、成犬期は年1回を目安に接種することが多いです。
成犬になった後の毎年の混合ワクチンの接種と狂犬病ワクチンの接種には、2週間程度の間隔を空けて接種しましょう。
【 初めての狂犬病ワクチン予防接種のタイミング 】
・ 生後91日以降 かつ 混合ワクチン3回目接種の4週間後
予防接種のスケジュールはこのようになります。
ワクチンの値段(費用)について
狂犬病ワクチンの費用は、概ね3,000円前後ですが、混合ワクチンは種類により値段に結構な幅があります。
小型犬では5種もしくは6種の混合ワクチンを接種する機会が多いでしょう。
5種で5,000円~7,000円、6種で5,000円~8,000円程度が目安の値段になります。
混合ワクチンについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
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予防接種が免除されるケース
予防接種は基本的には一生涯、毎年の接種が必要となります。
しかし、体調不良の老犬や持病があるなど、狂犬病ワクチンの予防接種を受けることが逆にリスクにつながると考えられる場合は、免除されることもあります。
この判断は獣医師によってなされるものです。
獣医師から接種しなくてもよいと判断された場合は、【 狂犬病予防注射実施猶予証明書 】を発行してもらいましょう。
発行料金は動物病院によって異なりますが、概ね1,000円前後であることが多いです。
予防接種が猶予された場合は、居住地域の役所の担当部署に証明書を提出する必要があります。
狂犬病予防注射実施猶予証明書の有効期間は1年間です。
そのため、猶予証明書は毎年入手する必要があります。
ペット同伴可能な宿泊施設・カフェ・ドッグランなどは、入場の際には狂犬病の予防接種と混合ワクチンの予防接種を証明する書類を確認されるケースがほとんどです。
愛犬の健康上の理由で予防接種を受けることができない場合でも、こうした猶予証明書を提示することで入場できる場合があります。
狂犬病ワクチンの予防接種の費用や時期、予防接種しなかったらどうなる まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本国内で狂犬病が発生する可能性は極めて低いですが、現在のところ予防接種は飼い主の義務となっています。
予防接種は愛犬の体調がよい時に受けさせましょう。
今回の記事のポイントはこちらです。
・ 予防接種の費用は3,000円前後、予防接種済票の発行手数料が550円かかります
・ 混合ワクチンの接種とは、2週間の間隔を空けましょう
・ 健康上の理由で接種ができない場合は【 狂犬病予防接種実施猶予証明書 】を入手しましょう
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(参考文献)