犬も人間と同じく腎臓病を患うことがあります。
特にシニア犬では発症可能性が高いと言われる慢性腎不全(腎臓病)とはどのような病気なのでしょうか。
この記事では犬の慢性腎不全(腎臓病)の症状やステージ、治療方法についてまとめています。
愛犬が腎臓病だと告げられた時の心構えについてもお伝えします。
犬の慢性腎不全(腎臓病)とは
腎臓という臓器は、体の中で不要になった老廃物や毒素をおしっことして排出したり、ホルモンの分泌などを行う機能あります。
腎臓が何らか原因で機能不全となると、水をたくさん飲んだり食欲不振、嘔吐などの様々な症状が見られます。
この状態を腎不全といいます。
慢性腎不全(腎臓病)は7歳以上のシニア犬に発症することが多く、死亡率も高い病気です。
愛犬が慢性腎不全(腎臓病)と診断されたら
愛犬が慢性腎不全(腎臓病)と診断されたら、飼い主さんとしてはとてもショックに感じるかもしれません。
慢性腎不全(腎臓病)は腎臓の機能に障害が起こり、徐々に機能低下する病気です。
発見されたときには既に腎臓の3割ほどしか機能していないというケースもよくあることです。
死亡率も高い病気とも言われますが、ここで心が折れないようにしましょう。
病気を完治することはできませんが、病状の進行を緩やかに抑えることは十分に可能です。
飼い主さんとしてはショックに感じるかもしれませんが、愛犬と一緒にこの病気と上手に付き合っていくことを前向きに考えることで、結果的に愛犬の寿命が伸びることにつながります。
犬の慢性腎不全(腎臓病)に見られる症状
犬の慢性腎不全(腎臓病)には、体重の減少、被毛の艶が悪くなる、水をたくさん飲んで薄い色のおしっこをたくさんする、吐き気が出たり、活動的でなくなる、などの症状が現れます。
慢性腎不全の初期段階の場合は飼い主さんはほとんど気付くことがありません。
こうした目に言える症状が表れているならは、慢性腎不全(腎臓病)はある程度進行していると言えます。
犬の慢性腎不全(腎臓病)のステージ
IDEXX社 CKDガイドライン の情報を元に、犬の慢性腎不全(腎臓病)のステージを見ていきましょう。
犬の慢性腎不全(腎臓病)のステージ1
ステージ1の段階では腎臓病の症状は見られず、血液検査をしても異常が見つかりません。
尿検査をするとことで尿比重の低下や蛋白尿、腎臓の形状に異常が見られるなどの結果が分かることがあります。
尿比重とは、おしっこに含まれる水分と尿素や塩化ナトリウムなどの水分以外の物質の割合との比重です。
尿比重は腎機能を調べるための指標の一つです。
腎機能はステージ1の段階で健康な場合と比べて3割ほどしか機能していません。
犬の慢性腎不全(腎臓病)のステージ2
ステージ2では、慢性腎不全(腎臓病)の症状として『多飲多尿』が見られます。
腎機能が低下するとおしっこを濃縮することが困難になるため、薄い色のおしっこを大量にするようになります。
そのため水分不足になって水をたくさん飲むようになります。
見た目の体の動きは健康で、食欲も通常通りであることが多いのでこの段階でもまだ気が付きにくいです。
愛犬が若くて健康な時の尿の色をよく覚えておくとよいと思います。
トイレシートを見てみると、健康な尿の場合は鮮やかな黄色なのですが、薄い色の尿は明らかに透明に近くなっていることがよく分かります。
ステージ2に差し掛かった時点で腎臓の機能は25パーセントほどまで低下しています。
犬の慢性腎不全(腎臓病)のステージ3
飼い主さんがようやく気が付くのがこのステージだと言われています。
ステージ3になると、体内の老廃物や有害物質が尿として排出ができなくなり、尿毒症が進行していきます。
尿毒素が血液をめぐることで口内の粘膜や胃粘膜が荒れてしまい、口内炎や胃炎になることがあります。
食欲が減退し、嘔吐などの症状も見られるため、この段階で飼い主さんが気が付くことがよくあるようです。
慢性腎不全(腎臓病)の血液検査ではCREA(血清クレアチニン)やBUN(血清尿素窒素)の数値の上昇が見られます。
CREA(血清クレアチニン)やBUN(血清尿素窒素)も本来は腎臓から排出される老廃物なのですが、腎臓病が進行することで排出困難となるため、血中濃度が上昇します。
上記の図でも、クレアチニンの数値の記載がありますが、慢性腎不全(腎臓病)の治療にはこのクレアチニンの数値の推移が観察されます。
犬の慢性腎不全(腎臓病)のステージ4
ステージ4では尿毒症がさらに進行するため、命に危険が及ぶ状態です。
慢性腎不全(腎臓病)の末期では透析治療や腎移植などが必要となります。
しかしこれらが実施できる病院が少ないことやドナーがいないことなどの問題で、現在の動物医療としては標準的な治療方法とは言えないようです。
犬の慢性腎不全(腎臓病)の治療方法について
犬の慢性腎不全(腎臓病)は症状をどれだけ緩和し、進行を遅らせるかということが治療のポイントです。
初期段階では食事療法と十分な水分補給が重要です。
お水は常に新鮮なものがいつでも飲めるような環境を整えましょう。
食事療法は、獣医師が指定する食事を与える必要があります。
慢性腎不全(腎臓病)の療法食は犬にとっては美味しいとは感じられないようで、すぐに食べなくなってしまう傾向があります。
飼い主としても非常に苦労するところで、食事を与えるためには様々な工夫が必要です。
慢性腎不全(腎臓病)の症状改善のための食事に関する情報は別記事で公開する予定です。
慢性腎不全(腎臓病)が進み、脱水などの症状が表れてくると経口補液や輸液療法などを用いて強制的な水分補給をする必要があります。
尿毒症を改善するためには、輸液療法に加えて薬物療法が必要になります。
尿毒症の毒素を吸着するための活性炭や、尿毒症による胃炎の症状を緩和するための薬を投与します。
慢性腎不全(腎臓病)を悪化させる原因となる高血圧を抑えるための薬が投与されることもあります。
犬の慢性腎不全(腎臓病)を早期発見する方法
慢性腎不全(腎臓病)を早期発見するためには、定期的な健康診断(血液検査や尿検査)を行うことが大切です。
特に7歳を超えるシニア犬の場合は、年に2回は健康診断を受診するようにしましょう。
その他に、花岡動物病院様 の情報を元に、犬の慢性腎不全(腎臓病)を早期発見するための方法をご紹介します。
冒頭にも掲載したこちらの図は、IDEXX社 の作成したものです。
図中にもある、SDMAという指標が犬の慢性腎不全(腎臓病)を早期発見することができる指標なのです。
以下部分的に情報を抜粋しています。
SDMAは腎臓の糸球体濾過率(GFR)の指標となる血液検査項目です。
腎臓がしっかりと働いているかを評価することができます。
日本では2016年からIDEXX社にて測定ができるようになった、比較的新しい血液検査項目です。
これまでの腎機能を評価する検査(Cre、BUN、尿検査)に追加することで、慢性腎不全などの腎疾患を早期に発見出来るようになりました。
SDMAの特徴としては、このようなものがあります。
【 SDMAの特徴 】
1.腎機能(糸球体濾過率)を正確に評価出来る
2.慢性腎臓病(CKD)においてCre(クレアチニン)よりも早期に上昇
SDMAは腎機能が平均40%喪失した時点で上昇
Cre(クレアチニン)は腎機能が約75%喪失するまで上昇しない
3.筋肉量に影響を受けずに腎機能を評価できる
Cre(クレアチニン)は筋肉量に影響されすい。
痩せた犬猫ではCreは下がり、筋肉量の多い犬猫ではCreは上がる傾向
犬の慢性腎不全(腎臓病)を予防する方法
犬の慢性腎不全(腎臓病)の原因は不明とされることが多いのですが、考えられる原因としてはこのようなものがあります。
【 犬の慢性腎不全(腎臓病)の原因 】
・ 老化による腎機能低下
・ 遺伝的要因
・ 自己免疫疾患
・ 他の疾患による腎障害
・ 悪性腫瘍(しゅよう) など
遺伝や免疫疾患が原因で引き起こされる慢性腎不全(腎臓病)は予防のしようがありません。
しかしながら、愛犬との毎日の生活の中で特に気を付けるべきポイントがあります。
それは【 食生活 】です。
具体的には、愛犬には人間用の食事を与えないで下さい。
人間用の食事には塩分が多く含まれており、愛犬の腎臓には非常に負担が掛かります。
もともと犬は塩分をほとんど必要としない動物であり、人間用の塩分が高い食事を与えることは腎臓にダメージを与え続けることになります。
ダメージが累積してシニア犬になった時には取り返しがつかないことになる可能性が高いです。
また、たんぱく質が過剰に含まれている犬用おやつも与えすぎには注意が必要です。
逆にたんぱく質が少なすぎても腎臓の回復や体の維持に必要なたんぱく質が不足してしまいます。
総合栄養食などバランスの良い食事を与えることが大切になります。
食事以外にも適度な食事や快適な生活環境を整えてあげることも重要です。
犬の慢性腎不全(腎臓病)は早期発見が難しいため、定期的な健康診断は必ず受診すること、毎日の生活の中でおかしいと感じた愛犬のしぐさや体調の変化を見逃さずに動物病院を受診することが大切になります。
犬の慢性腎不全(腎臓病)|早期発見する方法と病気との付き合い方 まとめ
いかがでしたでしょうか。
愛犬が慢性腎不全(腎臓病)と診断されたなら、受け入れるしかありません。
全てを悲観する必要はなく、症状を緩和させ病気の進行を遅らせる方法はあります。
薬の投薬や療法食などの食事コントロールは、愛犬にとっても飼い主さんにとっても大変なことです。
しかしながら少しでも工夫してこうした治療を進めていくことが結果的に愛犬が苦しまず、長生きできるヒケツになります。
飼い主さんとしては時には心を鬼にして治療継続することも大切です。
病気のことを正しく理解して、しっかりとした対策を行い、愛犬との生活を楽しんでいきましょう。
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