犬のかかりやすい病気の中で膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)があります。
膝蓋骨脱臼はパテラとも呼ばれ、犬の中でも小型犬に多い病気です。
この記事では犬のかかりやすい病気のランキングをお伝えするとともに、膝蓋骨脱臼(パテラ)の原因や症状、治療方法や治療費もご紹介します。
膝蓋骨脱臼(パテラ)は慢性化しやすいため、日常生活の中での予防も大切になります。
この記事では日常生活の中で膝蓋骨脱臼(パテラ)のリスクを回避するための予防方法、病気にかかりやすい犬種などについてもお伝えします。
犬のかかりやすい病気の種類ランキング
犬にはかかりやすい病気があります。
まずはその病気をトップ10のランキング形式でご紹介します。
ランキングはアイペット損害保険株式会社 ペットの傷病ランキングを元に作成しています。
まず第1位は皮膚炎です。
犬の皮膚に関する病気は細菌によるものやアレルギーによるものなど、様々な理由があります。
程度により治療費には幅がありますが、平均的な治療費は12,500円となっています。
第2位は外耳炎で、これも多くの犬の悩みになりやすい病気です。
そして第3位は下痢、第4位は腫瘍(がん)となっています。
第5位は異物の誤飲です。
誤飲は予防で防ぐことができますが、飲み込んだものによっては命に関わることにもつながり注意が必要です。
第6位は胃腸炎、第7位は骨折、第8位は嘔吐となっています。
第9位の歯周病も多くの成犬が持っている口腔関連の病気です。
そして第10位は今回この記事でご紹介する膝蓋骨脱臼となります。
犬の病気ランキング第10位: 膝蓋骨脱臼(パテラ)とは
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)はパテラ(Patellar Luxation)と呼ばれ、犬の後ろ脚の膝にある皿のような骨がパテラと呼ばれているため、この名称で浸透しています。
膝蓋骨の大きさは小型犬の場合は1センチ程度の大きさです。
大腿骨(だいたいこつ)という太もものの骨の正面側にあるくぼみ(滑車溝)に収まっていて、この溝を滑車のように上下に動くことでひざの曲げ伸ばしをサポートする役割を担っています。
この膝蓋骨が何かの原因で溝から外れてしまうことを『膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)』と言います。
膝蓋骨が大腿骨の内側に外れる場合を『内方脱臼(ないほうだっきゅう)』、外側に外れる場合を『外方脱臼(がいほうだっきゅう)』と分類されています。
どちらの側にも外れる場合は『両側性脱臼』と言いますが、犬の場合は内方脱臼のケースが多いと言われています。
膝蓋骨脱臼は先天性と後天性があり、先天性は生まれつき膝関節周辺の筋肉や骨、靱帯などに異常があり、それが原因となって脱臼になってしまいます。
後天性の原因は、事故やケガ、日常の生活スタイルです。
生活スタイルとは犬の生活環境です。
滑りやすい床の上で常に生活していたり、いつも飛んだり跳ねたりしていることが原因で引き起こされることもあります。
犬の病気ランキング第10位: 膝蓋骨脱臼(パテラ)の症状
犬の膝蓋骨脱臼には症状によりグレード(1~4)分類されています。
犬の膝蓋骨脱臼(グレード1): 日常では脱臼していない
通常の状態であれば膝蓋骨は正常な位置にあります。
医師が触診した時に指で膝蓋骨を押すと溝から外れますが、指を離すと膝蓋骨は元の位置に戻ります。
普段の生活で脱臼が起こることはまれです。
動物病院での触診や健康診断などでたまたま見つかることがあります。
多くは無症状でありこの段階で気づくのは少し難しいかもしれません。
犬の膝蓋骨脱臼(グレード2): 日常で脱臼を繰り返している
日常の中で脱臼を繰り返しているレベルです。
動物病院に相談する場合に最も多いグレードと言われています。
外れた膝蓋骨は簡単に戻すことができますが、戻った拍子に『ギャンッ』と鳴いたり、激しく痛がる仕草を見せることがあります。
犬は自分で膝蓋骨を戻すこともできます。
しかしこれは『治った』わけではなく、脱臼と脱臼を戻すことを繰り返すことで少々が悪化する可能性があります。
軟骨がすり減り関節炎を起こしたり靱帯が伸びてしまうとグレード3に移行してしまうことがあります。
犬が後ろ脚を後ろに伸ばすような行動を取っている時は、外れた膝蓋骨を自分で元に戻している可能性があります。
愛犬は強い痛みを感じており、おかしいと思ったらすぐに動物病院に連れていきましょう。
犬の膝蓋骨脱臼(グレード3): 常に脱臼している状態
常に脱臼している状態です。
指で簡単に元に戻せますが、指を離すとまたすぐに脱臼してしまいます。
脱臼する際には強い痛みを伴う事があります。
常に膝がねじれている状態で足を引きずった感じになったり内股気味で歩くようになったりするなど、歩行の状態がおかしくなります。
大腿骨(太ももの骨)や脛骨(すねの骨)が変形することもあります。
犬の膝蓋骨脱臼(グレード4):常に脱臼しており骨の変形が顕著に
常に脱臼したままの状態で、指で元に戻すことができません。
膝の曲げ伸ばしをする筋肉(大体四頭筋)が膝がねじれた状態のまま硬くなってしまいます。
膝の曲げ伸ばしができず歩行が困難になります。
常に脱臼したままの状態で、指で整復することができなくなります。
筋肉が収縮してしまっており、このグレードでは手術による治療も困難です。
骨の変形は重度化し、うずくまるような姿勢になったり、脚を地面にしっかりとつけて歩行ができなくなります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法
膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法は大きく2つあります。
内科療法と外科療法です。
基本的には外科療法(手術)で治療を行いますが、グレードが低い場合や高齢で手術に耐えられない場合などには内科療法を選択することもあります。
かかりつけの動物病院の医師とよく相談して決めましょう。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法: 内科療法(保存的治療)
内科療法は『保存的治療』とも言われ、グレードも低く症状も軽度である場合、高齢その他の理由で手術による治療に耐えられない場合に選択されることがあります。
内科療法では消炎剤・鎮痛剤やレーザーなどを使用して、関節炎による症状を一時的に抑えることを目的にしています。
外科手術と違って膝関節や関節周囲の構造に変化が起こる訳ではないため、完治するということではありません。
痛みや炎症が収まるまでケージに入れて運動制限を行います(ケージレスト)
その後は体重管理や生活環境を改善して再脱臼することを防ぐことになります。
関節の健康に配慮したフードやサプリメントを与えたり、間接のサポーターを使用することもあります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法: 外科手術
大腿骨滑車(だいたいこつかっしゃ)や膝部分のアライメント(膝関節の傾きのことを指す)が異常な場合には外科的な手術が行われます。
基本的にはグレードに関係なく、痛みがあり歩行が困難であれば積極的に手術を選択される傾向にあります。
特に若齢犬は脱臼を繰り返すことにより、関節炎が発生しやすくなります。
1歳未満の子犬であれば成長とともに骨も変形して歩行が困難になります。
手術は大きく以下の方法があります。
① 膝の溝を深くして、膝蓋骨が滑車溝を乗り越え難くする。
② ピンを打つことで膝蓋骨を支えている大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を固定する。
③ 膝蓋骨を正しい位置に保持するため、必要な靱帯(じんたい)を適切な長さに縫い縮めて外れ難くする。
④ 正常な位置に膝蓋骨を戻した状態でみたとき、膝蓋靱帯(しつがいじんたい)全体がゆがんでいる場合には、膝蓋靱帯の下方付着部である頸骨粗面(けいこつそめん)を移動してまっすぐに矯正する。
愛犬の症状を見ながら、上記の手術方法を選択していきます。
複数の方法を組み合わせる手術も実施されています。
脱臼を繰り返すことで骨や関節が大きく変化してしまってからの手術は難しいので、早期の手術が望ましいと考えられています。
グレードが高く重篤なケースでは大腿骨の骨切術など特殊な手術が必要となり、グレードが低い時の手術と比べると手術の効果は低くなってしまいます。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療費用の相場(数万円~数十万円)
本記事記載の犬の病気ランキングでは、106,400円でした。
これは治療費用の平均値です。
これまでご紹介してきたように、膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法には内科療法と外科療法があります。
それぞれの治療費用はどのくらいが相場なのでしょうか。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法: 内科療法
内科療法費用は初診料(1,000円程度)の他に消炎剤・鎮痛剤の処方に2,000円程度必要です。
グレードが低い場合の最新の内科療法とはレーザー治療があります。
レーザー治療は犬にとっても痛みや刺激がなく、安心して受けさせることができる治療方法として注目されています。
レーザー治療は10分程度の照射で痛みがよくなるまで複数回通院することになります。
治療にかかる費用は一回5,000円程度です。
レーザー治療は全ての病院で受けることができるわけではありませんので、事前に動物病院に問い合わせしておくことをオススメします。
上記の処置がどのくらいの期間継続するかということで治療費が決まってきますが、数万円程度は見込んでおいた方がよいでしょう。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の治療方法: 外科手術
これまでお伝えしたように、外科手術には複数の方法があります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)の症状によって費用も変わってきますが、150,000円前後は必要になってきます。
これに入院費用(10,000円~20,000円/日)も掛かってきます。
手術費用全体としては200,000円前後は見込んでおいた方がよいでしょう。
膝蓋骨脱臼(パテラ)にかかるリスクを考えるのであれば、ペット保険の加入は検討に値するかもしれません。
ペット保険に加入すべきか、公平な目線で判断を行うための記事をこちらで紹介しています。
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膝蓋骨脱臼(パテラ)にかかりやすい犬種
小型犬に多いと言われる膝蓋骨脱臼(パテラ)ですが、実際にかかりやすい犬種はどのような犬種でしょうか。
【 膝蓋骨脱臼(パテラ)にかかりやすい犬種 】
・ トイ・プードル
・ チワワ
・ ヨークシャー・テリア
・ ポメラニアン
・ パピヨン
・ パグ
・ ペキニーズ
・ キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
・ ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
・ 柴犬
やはり膝蓋骨脱臼(パテラ)にかかりやすい犬種は小型犬が中心であることが分かります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法
膝蓋骨脱臼(パテラ)は経過の観察や付き合いが長くなる病気です。
そのため、日々の生活の中で予防や症状を悪化させないことが非常に重要になります。
膝蓋骨脱臼(パテラ)になりやすい犬種の飼い主さんはこのような予防対策を行ってあげましょう。
ポイントは【 膝に負担を掛けないこと 】です。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法①: 室内は滑りにくい床にしましょう
この病気は毎日の歩行による膝への負担が蓄積して起こるケースが多いので、愛犬の生活環境を整えてあげることが大切になります。
まずは、毎日歩く地面(床)は犬の脚が滑りにくい材質のものにしてあげましょう。
滑りやすいフローリングでも、フロアマットやジョイントマットを敷き詰めてあげると随分と効果があります。
100均で簡単に手に入り、費用も手間もかからない方法です。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法②: 体重管理
体重が重ければ必然的に膝に負担が掛かります。
愛犬の体重管理には十分注意してあげましょう。
100gの重さでも。愛犬にとってはかなり大きいです。
2kgの小型犬の100gは、50kgの成人女性で換算すると2.5kgに相当します。
体重が重たければその分膝に負担が掛かります。
健康的な体重の範囲内で膝に極力負担が掛からないように、食事や運動などで体調管理を行ってあげましょう。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法③: 過度な運動は避ける
段差の上り下り、ソファやベッドなど高いところにジャンプしたり飛び降りたりを繰り返す。
こうした動作を過度に行うと膝への負担はかなりかかってしまいます。
急なターンや自分のしっぽを追いかけるような行動なども膝に負担が掛かってしまうので、注意しましょう。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法③: 爪切りや足裏の被毛カット
愛犬がしっかりと肉球を使って歩行ができるようにするには、爪切りや肉球の間の被毛をしっかりとカットしてあげることが大切です。
爪や被毛が伸びていると滑りやすくなったりしっかりと肉球を地面につけることができないため、歩行に支障が出ます。
その結果が膝関節にも負荷が掛かってしまうため、こまめにこうしたケアをしてあげることは大切になります。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法④: 関節によいサプリメントやフードを選ぶ
これは補助的な予防方法ですが、膝関節に効果があるとされるサプリメントも与えるとよいでしょう。
これまでに挙げた方法と併用するとより効果が期待できます。
犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)の予防方法⑤: 健康診断やストレッチ運動
時間がある時に膝を軽く曲げ伸ばしをしてあげましょう。
大体四頭筋をほぐし、病気の予防に効果があります。
その他健康診断に定期的に連れて行ってあげましょう。
健康診断の時に膝蓋骨脱臼(パテラ)の症状がないか、獣医師に確認をすることで早期の発見につながる可能性もあります。
やはり定期健康診断は、病気の早期発見のためには最低でも1年に1回は受診することをオススメしたいです。
犬の病気ランキング|膝蓋骨脱臼症(パテラ)の症状・治療法・予防法と治療費用 まとめ
今回は犬のかかりやすい病気ランキングにランクインしている膝蓋骨脱臼(パテラ)の症状・治療方法・予防方法や治療費用について詳しくご紹介しました。
今回ご紹介した内容をまとめるとこのようになります。
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