犬の常同障害という病名を聞いたことはありますか。
犬も私たち人間と同様、ストレスや不安を感じます。
いつも自分のしっぽを追いかけている、自分の体を舐め続けるなどの症状が見られます。
愛犬が常同障害かも、と思ったときに私たち飼い主は何をすればよいのでしょうか。
記事では常同障害の原因や症状、治療方法などを詳しくご紹介します。
犬の常同障害は心の病気です
【 強迫性障害 】という病気があります。
過度なストレスや不安から自分の手をずっと洗い続けてしまうといった心の病気です。
犬も人間と同様、強い恐怖感や不安、ストレスを感じる事があります。
犬の【 常同障害 】はこの強迫性障害と似たものだと考えられています。
常同障害は不安障害のひとつで、ストレスを感じたりどうしたらよいか分からなくなってしまった時に、自分のしっぽを追いかけたり、体をずっと舐め続けるといった行動を繰り返します。
時には何も行動しなくなることもありますが、行動自体に意味はないと言われています。
繰り返し行動をすることでストレスを解消しているのですが、行動も一時的であればそこまで問題ありません。
しかし常時ストレスにさらされることで行動がエスカレーションすると、次第に周りの状況にも関係なく起こるようになります。
この常同行動が食事や散歩などの日常生活に支障をきたすレベルになってしまうと、常同障害と言われます。
完治は難しいですが、上手に付き合っていくことは可能な病気です。
独断で決めず、獣医師とも相談しながらゆっくりと向き合う姿勢が大切です。
犬の常同障害の原因
常同障害が出ると日常生活もままならない状態に
犬の常同障害は、一旦症状が出るとその症状が止まらず、食事や散歩などの日常生活に支障が出ます。
夜中に突然始まったり、ボーっとしていると思いきや突然始まったりと、常同行動が始まるタイミングが分かりにくくなってしまうことも特徴です。
主には強いストレスや欲求不満なといった精神的な原因が考えられますが、遺伝なども影響すると言われています。
犬だけでなく、猫でも発症することがあります。
犬の常同障害の原因①: 継続的なストレス
強いストレス環境に継続的にさらされると常同障害が発症しやすいと言われています。
お手入れが極端に苦手、知らない人や犬に接触することで強いストレスを感じてしまうといった日常生活の中でのストレスに起因するケースも多いです。
また大きな音をとても怖がっていて、そうした環境が常態化することで常同障害につながる可能性もあります。
犬の常同障害の原因②: 欲求が満たされない
日常生活で最低限必要な欲求が満たされないことが強いストレスとなり、常同行動につながります。
散歩の時間が不十分(あるいはまったく散歩させてもらえない)、体を動かしたり暇つぶししたりできない、狭いハウスで一人で長時間留守番しないといけない、といった環境下で過ごしたりすると常同障害に至るケースがあるようです。
犬の常同障害の原因③: 病気やケガ
病気やケガが常同障害につながるケースもあります。
慢性的な皮膚病で常にかゆみのストレスにさらされている、痛みを伴う病気や骨折などが原因で常同行動が見られるようになります。
病気やケガが治っても、常同行動が止まらないこともあるようです。
犬の常同障害の原因④: 遺伝や犬種
親犬が常同障害を発症していた場合は、遺伝により子犬も常同障害を発症するケースがあると言われています。
また、常同障害が発生しやすい犬種もあるようです。
ストレスを感じやすい犬種や、猟犬のように多くの運動量が必要な犬種などが該当します。
犬の常同障害は3才までに発症することが多い
犬の常同障害の発症年齢は1~3才までが多いと言われています。
その中でも多くの犬が1才までになんらかの症状を表すことが分かっています。
4才以上の犬に初めて常同障害の症状が現れた場合は、別の病気である可能性が高いと考えられています。
このため、常同障害の診断には発症年齢が重要だと言われています。
犬の常同障害でよく見られる症状とは
常同障害の症状としてはこのような行動が挙げられます。
【 犬の常同障害の症状 】
・ 自分のしっぽを追いかけてクルクルと回り続ける
・ グルグルと歩き回る
・ 影や光を追う
・ 自分の後ろが気になってよく振り返る
・ 自分の体を舐めたり噛んだりする
・ 自分のしっぽにうなったり噛みつく
・ 穴を掘る
・ 幻覚を見ているように口をパクパクと動かす など
犬の常同障害の治療方法について
犬に常同障害の症状が見られた場合はストレスの原因を探し出して、その原因を解消するような工夫が必要です。
例えば留守番の時間を楽しく過ごせるように知育玩具やフードを詰めたおもちゃを与える、大きな音などのストレスからできる限り遠ざけてあげるなど。
自傷行為ある場合はそれに見合った治療が必要になります。
噛みついたりしないようにエリザベスカラーを装着することもあります。
症状がひどい場合は行動治療の専門家による行動改善のトレーニングを行います。
場合によっては、抗不安薬などの薬も併用されることがあります。
症状が改善されないからといって、叱りつけたりすることはやめて下さい。
さらなるストレスにつながり、症状が悪化する可能性があります。
若い愛犬が常同障害で見られる行動を取り続ける場合は、独断せずに犬の行動診療に詳しい獣医師に相談して下さい。
外傷などがないといって飼い主さんの自己流の対応方法では、症状の改善は愚か、状態を悪化させる可能性があります。
特にこの記事の終盤でお伝えする犬種特有の症状があり、その症状が見られた場合は獣医師のもとを訪れて下さい。
犬の常同障害の治療費について
常同障害の治療費は、動物病院で薬を処方された場合は数千円掛かるようです。
行動修正のカウンセリングを受けた場合は、5,000円~20,000円程度とも言われています。
常同障害に即効く治療方法や薬は存在しません。
一番大切なことは、常同障害が起こりにくくなるように、生活環境を整えてあげることです。
そのためには、わたしたち飼い主が愛犬のことをしっかりと観察してあげることが大切です。
愛犬のストレスや不安の原因は何なのか、注意深く探り、その原因が解消されるように努めることが治療の一番の近道です。
つまり、犬の常同障害を治療するためには、飼い主(家族)が本気で取り組むことが最も大切なことなのです。
犬の常同行動 かかりやすい犬種とは
常同障害にかかりやすい犬種はこのような犬種だと言われています。
【 常同障害にかかりやすい犬種 】
・ 柴犬
・ ジャーマン・シェパード・ドッグ
・ トイ・プードル
・ ミニチュア・シュナウザー
・ ボーダーコリー など
そして、犬種ごとに常同行動の典型的な症状があると言われています。
柴犬やジャーマン・シェパード・ドッグは自分のしっぽを追うことが特徴です。
トイ・プードルは自分の体を舐め続けることが多いようです。
ミニチュア・シュナウザーは自分の後ろを気にして振り返るという行動が見られます。
ボーダー・コリーは光や影を追ったりします。
犬の常同行動の予防方法
犬の常同障害を予防するためには、愛犬にストレスや不安を感じさせないようにすることです。
毎日少しでも触れ合える時間を作ったり、一緒にいる時は話しかけたり散歩に連れて行くなどコミュニケーションを大切にしましょう。
ストレスのかかる生活環境をなるべく改善し、留守番など一人で過ごす時間は退屈しないような工夫をしてあげましょう。
とはいえ、犬の中には人間や犬と触れ合うことがストレスと感じる子もいるため、行動療法に長けた獣医師に相談しながらじっくりと向き合うことが大切になります。
犬の常同障害の症状・治療法・予防法と治療費用 まとめ
今回は犬の心の病気である、常同障害についてご紹介しました。
最後に記事の内容をまとめるとこのようになります。
当サイト(ワンだふるライフ)では、犬のストレスに関する別の記事もあります。
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