犬のフィラリア症の予防はどのように行っていますか。
この記事ではフィラリアの症状を詳しく解説し、愛犬をしっかり守るための予防方法をお伝えします。
予防薬の投薬時期と注意点についてもまとめています。
また、予防薬を飲み忘れた時の対処方法についてもご紹介します。
犬のフィラリア症について
フィラリアは体長17センチ(オス)~28センチ(メス)のそうめんのような形をした寄生虫です。
そしてフィラリア症(犬糸状虫症:イヌシジョウチュウ)は、フィラリアを持った蚊に刺されたことが原因で発症します。
フィラリアが犬の体内に寄生し成長することで、心臓や肺、さらには肝臓や腎臓に機能障害が起こります。
フィラリアが成虫になると、心臓(右心室)の肺動脈に移動します。
フィラリアが肺動脈に寄生すると、肺に十分な血液を送ることができません。
また、右心室に戻ってくる血液量も不十分になります。
息切れや咳、腹水が溜まって腹囲が大きくなるなどの症状が出ることになります。
【 POINT 】
フィラリア症は寄生虫が心臓に寄生することで、心臓や肺に機能障害が起こる病気
フィラリアが感染する仕組み
フィラリア症(犬糸状中症)は1回の夏で10パーセント、屋外で飼育されている犬であれば3年でほぼ100パーセントが感染すると言われています。
フィラリアはどのような感染経路で犬に感染するのでしょうか。
以下アクサダイレクトのホームページより引用です。
【 フィラリアの感染経路 】
・ 蚊がフィラリアに感染した犬の血液を吸血する(図:1~2)
・ 蚊の体内にフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が入る(図:3)
・ フィラリアの幼虫を持った蚊が別の犬を刺す(図:4)
・ 刺された犬がフィラリアに感染する(図:5)
上記のサイクルが繰り返され、感染が拡大していきます
フィラリア(寄生虫)は6~7カ月で成虫になる
蚊によって犬の体に媒介されたフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)は、皮下組織や筋肉などで成長します。
その後2~3ヵ月掛けて血管に侵入した後、心臓や肺動脈に達して3~4ヵ月で成虫になります。
成虫になったフィラリアは犬の体内で子虫を産卵し、フィラリアが増殖することになります。
血管や心臓に寄生したフィラリアを死滅させることは困難です。
犬のフィラリア症の主な症状
犬のフィラリア症は、心臓に寄生したフィラリアが原因で心臓が正常に機能しなくなります。
そのため犬の全身の臓器がうっ血してしまい、肺・腎臓や肝臓などの臓器に機能不全が起こってしまうのです。
フィラリアに感染すると、軽症としては軽い咳をし始めます。
中症になると、ゼーゼーした感じの咳が出たり、栄養状態や毛艶が悪くなってきます。
運動を嫌がるようにもなります。
重症の状態では、元気や食欲がなくなってきます。
呼吸困難や運動時に失神することもあります。
お腹に水が溜まり、腹囲が大きくなります。
また、突然血尿が出たり、呼吸困難や虚脱などの激しい症状がみられることがあります(大静脈症候群)
この場合は至急の対処が必要ですので、動物病院でフィラリアの摘出をしてもらうなどの緊急処置が必要になります。
まとめるとこのようになります。
フィラリア症が重篤になると、手術による寄生部位の除去や強い作用の薬が必要になるため、フィラリアが成長する手前で駆除をすることが重要になります。
また、フィラリアを駆除できたとしても臓器に慢性的な機能不全が残ることがあります。
そのため、フィラリア症の対策はフィラリアの幼虫が血管から心臓に到達する2カ月間の間に駆除することがとても大切になります。
フィラリアの治療方法
フィラリアの治療方法といえば、予防薬の投薬をイメージする方が多いでしょう。
本記事でも予防薬を中心とした情報をご紹介しますが、実際のフィラリアの治療方法はいくつかの種類があります。
① 予防薬による予防
予防薬の投与はフィラリアの症状が出ていない犬に対して行われる方法です。
蚊から媒介されたフィラリアの幼虫がおおよそ2カ月掛けて血管から心臓に寄生する前に駆除します。
一般的にフィラリアの予防として一番認知されている治療方法です。
② 外科手術
大静脈症候群を発症している場合の緊急処置として実施されることがあります。
全身麻酔も必要になるため、手術に耐えられると判断された若い犬が対象です。
特殊な金属のブラシを使ってフィラリアを絡めとり、直接犬の体内からフィラリアの成虫を除去します。
除去したあとは内科療法で治療するとともに、継続的な予防も必要となります。
③ 駆除薬剤を使った方法
フィラリアを駆除する薬剤を使った治療方法があります。
しかし、薬剤は強力で犬の体にも負担が掛かるため投薬は非常に慎重に判断されます。
死滅したフィラリアが血管に詰まって状態が悪化する可能性もあります。
副作用も懸念されるため、この治療方法を選ぶ必要がないように日頃の予防が大切です。
フィラリア駆除薬として有名なイミトサイドは2014年に日本では販売中止となりました。
④ 対症療法
対症療法とは、病気の原因に直接アプローチする治療方法ではなく、主要な症状を緩和させるための方法です。
外科手術や薬剤での治療に耐えられない犬に対して行われます。
そのため、フィラリアに対して直接的な治療は行わず、フィラリアの症状(咳や腹水など)を軽減させるためのアプローチが取られます。
咳を抑えたりお腹にたまった水を抜いたりします。
循環器不全に対しては、それぞれの症状に合わせた食事を与えることで症状を緩和します。
対症療法が効果を発揮することで、寿命を先延ばしできる犬もいます。
フィラリアの予防薬と投薬時期
これまでお分かりのように、犬のフィラリア症の最大の対策は【 予防 】です。
そしてフィラリア症の予防対策として最もポピュラーな方法は、予防薬を投薬することです。
予防と聞くと、フィラリアを持った蚊に刺されないことをイメージする方が多いでしょう。
しかし、フィラリア症の予防は、体内に侵入してきたフィラリアの幼虫を血管から心臓に侵入するまでの2カ月間の内に死滅させることです。
【 予防薬によるフィラリア症予防とは 】
犬の体内に侵入したフィラリアを2カ月以内に死滅させること

地域にもよりますが、東京・大阪などであればフィラリアを媒介する蚊(アカイエカやヤブカなど)は5月の中旬から11月中旬位までが発生時期と言われています。
フィラリア症の予防薬は、蚊に刺されることによって犬の体内に媒介されたフィラリアの幼虫を死滅させることが目的です。
投薬開始は蚊の発生し始める時期の1カ月後、投薬終了は発生終了時期の1カ月後までとなります。
上の図だと、予防薬の投薬期間は6月~12月までという事になります。
予防薬に対するよくある誤解として、フィラリア予防薬を投与すると、投与してから1カ月間蚊に刺されないという理解です。
フィラリア予防薬は蚊に刺されてフィラリアの幼虫が犬の体内に入ることを前提としています。
犬の体内に寄生したフィラリアの幼虫を、1ヵ月以内に死滅させる効果があります。
体重により薬の分量も違います
フィラリアの予防薬は、錠剤タイプ・粉末タイプなど様々なタイプがありいます。
また、フィラリアだけに効果があるものから、ノミ・ダニ・犬回虫・犬鉤虫・犬鞭虫にまで効果を発揮する薬もあります。
多くのフィラリア予防薬は体重別で投与量が違います。
体重に合った分量を投薬するようにしましょう。
フィラリアの予防薬を飲み忘れた時は
飲み忘れても投薬を忘れずに行って下さい
フィラリアの予防薬を飲み忘れた時(投与し忘れた時)はどうしたらいいのでしょうか。
まずは、飲み忘れに気が付いた時から投与をしっかりと継続して下さい。
何度も書きますが、フィラリアの予防薬は体内に侵入したフィラリアの幼虫が血管から心臓に侵入する前に死滅させることに効果を発揮します。
その期間は約2ヵ月です。
血管に侵入してしまったフィラリアに対してはフィラリア予防薬は効果を発揮しません。
しかし、新しく蚊に刺されて犬の体内に侵入するフィラリアの幼虫は、蚊の発生する期間中出てくるわけです。
ですから、新しく犬の体内に寄生したフィラリアは予防薬で死滅させる必要があります。
フィラリア予防薬は、フィラリアが血管に侵入することを予防するための薬だとも言えます。
感染が分かるのは半年後です
犬がフィラリアに感染したかどうか分かるのは、感染してから約半年後です。
薬を飲み忘れたからといって次の月に感染したかどうか分かる性質のものではありません。
ですから、感染が発覚するのは多くの場合翌年にフィラリア予防薬を処方してもらうタイミングです。
動物病院でフィラリア検査を行った結果、感染の結果が判明します。
飲み忘れの時期に感染したとしても、それ以降フィラリアを犬の体内で増殖させないことが大切です。
したがって、しっかりと投薬を忘れずに行うことが大切になります。
そして何度も言いますが、予防薬投与の最終月は特に飲み忘れさせることがないように注意して下さい。
最終月に感染してしまうと次の夏のシーズンまでの間に成虫となり、フィラリアが犬の体内で産卵することになり非常に危険です。
フィラリアの検査について
フィラリアの予防薬を入手するためには、基本的に動物病院を受診することになります。
動物病院ではフィラリアの検査をしてくれますが、実際にはどのような検査を行うのでしょうか。
検査には主に以下の3つの方法があります。
【 直接法 】
血液を1滴直接顕微鏡で観察しミクロフィラリアの有無を調べる。検出率は約50%。前年の不完全な予防、血液中にミクロフィラリアの泳いでいる時間帯などで必ずしも正確な結果が出ないことがある。
【 集虫法 】
ある程度まとまった血液を遠心したりフィルターを通したりしてミクロフィラリアの有無を調べる(直接法より検出率があがる)。
【 フィラリア成虫の抗原検査 】
血液を薬剤と反応させ、フィラリアの成虫から排泄される微量な物質を抗原抗体反応(検査キット)でみる方法。検出率90%以上(オスのみの寄生、感染後6ヶ月以内の未成熟虫の寄生などでは検出されないこともある)。
毎年の予防をしっかりと行っている犬に対しては顕微鏡で確認する直接法で十分です。
フィラリア予防薬を飲み忘れていたり、これまでの予防歴が不明な犬に対しては検出率の高い検査キット使って検査することが多いようです。
その他の基本的な予防方法
フィラリアの予防は予防薬だけではありません。
家の中に蚊が入らないようにしっかりと網戸にしておくことや、散歩の時に蚊の居そうな草むらを避けることなども立派な予防方法です。
蚊取り線香を焚いたり、虫よけスプレーを散布して散歩に出かけることも有効な対策です。
つまり、蚊に刺されないようにすることが根本的な対策方法でもあるのです。
犬のフィラリア症| 予防薬と飲み忘れた時の対処法 まとめ
フィラリア症は昔は犬の死因の原因でトップクラスの項目でしたが、予防薬による治療ができるようになりました。
投薬を忘れずにしっかりと行えば、100パーセント予防できる症状と言えます。
今回の記事のまとめです。
・ フィラリア予防薬は体内に侵入して約2ヵ月間までのフィラリアを死滅させる
・ フィラリア予防薬は、血管に寄生したフィラリアには効果がない
・ 投薬は12月までと覚えておきましょう(特に最終月が大切)
・ フィラリア予防薬を飲み忘れても投薬は継続して下さい
・ フィラリアの感染が分かるのは、体内に侵入して6カ月後です
フィラリア対策と同じく対策が必要なノミ・ダニに関連する記事もまとめています。
■ 犬のノミ・ダニ予防対策 ノミ・ダニの違いと予防薬の選び方
犬のノミ・ダニ対策は万全ですか。 夏を中心に、犬はノミ・ダニに噛まれてしまうリスクにさらされています。 ノミ・ダニの寄生を放っておくと、皮膚炎や貧血など様々な症状が発生することがありあなどれません。 今回は愛犬をノミ・ダニ[…]
■ 犬にノミ・ダニが寄生した時の症状や見つけ方・取り方
犬に寄生するノミ・ダニは夏場を中心に1年中存在します。 ノミ・ダニの寄生に気づかないでいると、アレルギー性皮膚炎や貧血、媒介された最近から生じる感染症など様々な症状が起きる可能性があります。 この記事では犬に寄生したノミ・ダニを[…]
■ 狂犬病ワクチンの予防接種の費用や時期、予防接種しなかったらどうなる
狂犬病ワクチンの予防接種はお済みですか。 狂犬病の死亡例は日本ではここ数十年ほとんどありませんが、狂犬病は発症すると100%死に至る大変恐ろしい病気です。 本記事では、狂犬病ワクチン予防接種の費用や時期、予防接種をしなかった場合[…]
■ 犬のワクチン|子犬のスケジュール、ワクチン種類表や値段をご紹介
年に1回必要とされる犬のワクチン接種。 今回は子犬の接種スケジュールや何種類のワクチンを打てばよいか、ワクチンの値段などワクチンに関する様々な疑問に答える記事です。 ワクチンを接種する回数や副作用、またワクチンを打てない場合の対[…]
(参考サイト)