腎臓、肝臓、膵臓(すいぞう)。
これらの臓器は“沈黙の臓器”を言われており、病気になっても発見が難しいものもあります。
人間同様に犬にも同じことが言えます。
今回の記事では腎臓の機能とよく見られる犬の腎臓にまつわる病気をご紹介します。
腎臓の機能とは?
腎臓は身体の中でもとても大切な臓器です。
主にこのような機能を持っています。
1. 老廃物の排出
腎臓は血液中の老廃物や不要な物質をろ過し、尿として排出します。
これにより、体内の毒素を除去し、健康を維持します。
2. 電解質のバランス維持
腎臓はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質のバランスを調整します。
これにより、細胞の正常な機能をサポートします。
3. 体液量の調節
腎臓は体内の水分バランスを管理し、血圧を維持します。
体液の量が多すぎる場合、尿の生成を増やして余分な水分を排出し、逆に体液が不足している場合は尿の生成を減らして水分を保持します。
4. 酸塩基平衡の維持
腎臓は血液のpHを調節する重要な役割を果たします。
酸性やアルカリ性の物質を尿中に排出することで、体内の酸塩基平衡を保ちます。
5. ホルモンの生成
腎臓はいくつかの重要なホルモンを生成します。
例えば、エリスロポエチンは赤血球の生成を促進し、レニンは血圧の調節に関与します。
6. ビタミンDの活性化
腎臓はビタミンDを活性化し、カルシウムの吸収を助けます。
これにより、骨の健康を維持します。
このように腎臓の機能は犬の全身の健康に直結しており、これらの機能が適切に働かないと様々な健康問題が発生する可能性があります。
腎臓の働きが低下すると現れる症状
腎臓の機能が低下すると現れる症状はこのようなものがあります。
最近様子がおかしい、この中で当てはまる項目がある、ということであればかかりつけの獣医師に診てもらいましょう。
✅ 水を飲む量が増える
尿を濃縮する力が低下して尿の量が増えます。
それに従い、水を飲む量も増加します。
✅ おしっこの量が増える
上記と同様に尿を濃縮する力が低下することにより尿の量が増えます。
✅ 嘔吐する、食欲が落ちる
腎臓の機能が低下して老廃物を排除しにくくなることで嘔吐が引き起こされます。
✅ 便秘気味になる
おしっこが大量に出たり、嘔吐したりすることで体内の水分量が減ることに伴い便秘気味になります。
✅ 脱水症状がでる
おしっこが大量にでるなどの理由で体内の水分量が減り、皮膚の張りがなくなったりするなどの脱水症状の傾向が表れます。
✅ 下痢が続く
症状が進行して尿毒症になると、排出ができずに体にたまった老廃物により下痢が引き起こされます。
非常に注意が必要です。
それでは、犬によくみられる腎臓の病気はどのようなものがあるのでしょうか。
慢性腎臓病
犬の慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)は、腎臓の機能が徐々に低下していく進行性の病気です。
この病気は、腎臓のフィルター機能が劣化し、老廃物や余分な液体を効率的に排出できなくなるため、体内に毒素が蓄積し、様々な健康問題を引き起こします。
症状
慢性腎臓病の症状は初期には明確に現れないことが多いですが、進行するにつれて以下のような症状が見られることがあります。
- 多飲多尿(頻繁に水を飲み、尿の量が増える)
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐
- 下痢
- 脱水
- 口臭(特にアンモニア臭)
- 弱さや倦怠感
- 毛艶の悪化
診断
CKDの診断は、主に以下の方法で行われます。
- 血液検査:血中のクレアチニンや尿素窒素(BUN)などの腎機能マーカーのレベルを測定します。
- 尿検査:尿中の蛋白質や比重をチェックし、腎臓のろ過能力を評価します。
- 画像診断:超音波検査やX線を用いて腎臓のサイズや形状の異常を確認します。
- 血圧測定:高血圧はCKDに関連することが多いため、血圧の測定も重要です。
治療
慢性腎臓病は完治することはありませんが、適切な治療と管理によって病気の進行を遅らせ、犬の生活の質を向上させることができます。
治療法には以下が含まれます。
- 食事療法:腎臓に負担をかけないための低蛋白、低リンの特別な食事が推奨されます。
- 水分補給:適切な水分補給を維持するために、飲水量の管理や場合によっては皮下点滴が行われます。
- 薬物療法:高血圧の管理、貧血の治療、嘔吐や下痢の緩和、酸塩基平衡の維持のために薬が使用されます。
- サプリメント:必須脂肪酸やビタミン、ミネラルの補給が必要な場合もあります。
予防
慢性腎臓病を完全に予防する方法はありませんが、以下の方法でリスクを減らすことができます:
- 定期的な健康チェック:早期発見と早期治療が重要です。
- 適切な食事管理:バランスの取れた食事を提供し、過剰な蛋白質や塩分を避ける。
- 適度な運動:体重管理と全身の健康を維持するために重要です。
- 毒素の回避:有害物質や薬物の過剰摂取を避ける。
こちらの記事で詳しく解説しています。
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急性腎障害
犬の急性腎障害(AKI: Acute Kidney Injury)は、腎臓が突然機能しなくなる状態で、迅速な治療が必要です。
この状態は急激に進行し、適切な対応が遅れると生命に関わることがあります。
原因
急性腎障害の原因は多岐にわたります。
主な原因には以下のものがあります。
- 毒物の摂取:エチレングリコール(不凍液)、特定の薬物(NSAIDs、抗生物質など)、有毒植物、重金属(鉛、鉈など)など。
- 感染症:レプトスピラ症、腎炎などの細菌感染やウイルス感染。
- ショックや低血圧:大量の出血や重度の脱水、敗血症、重度の心不全などにより腎臓への血流が減少。
- 外傷:腎臓の物理的損傷。
- 腎臓への直接のダメージ:腎臓の内部での血栓形成や結石など。
症状
急性腎障害の症状は急激に現れます。
主な症状は以下の通りです。
- 急激な元気喪失
- 食欲不振
- 嘔吐や下痢
- 多飲多尿または尿の減少(無尿)
- 脱水症状
- 腹痛
- 口臭(特にアンモニア臭)
- 筋肉の震えやけいれん
診断
急性腎障害の診断は迅速かつ正確に行う必要があります。
主な診断方法は以下の通りです。
- 血液検査:クレアチニンや尿素窒素(BUN)、電解質(ナトリウム、カリウムなど)のレベルを測定。
- 尿検査:尿中の蛋白質、血液、比重を評価。
- 画像診断:超音波やX線で腎臓の構造や異常を確認。
- 血圧測定:低血圧や高血圧の有無を確認。
治療
急性腎障害の治療は、原因に応じて異なりますが、一般的な治療法には以下が含まれます。
- 輸液療法:脱水の改善と腎臓への血流を回復させるために、静脈点滴を行います。
- 薬物療法:感染症の場合は抗生物質、毒物の中和剤、嘔吐や下痢の治療薬などが使用されます。
- 透析:重度の場合は血液透析や腹膜透析が行われることがあります。
- 対症療法:電解質バランスの修正、痛みの管理、栄養サポートなど。
予後
急性腎障害の予後は、原因の迅速な特定と治療の開始に大きく依存します。
早期に適切な治療を受ければ回復の可能性は高まりますが、治療が遅れると永久的な腎機能障害が残ることがあります。
また、重度の場合は死亡のリスクも高いです。
予防
急性腎障害を予防するためには、以下のポイントに注意することが重要です。
- 有害物質の摂取を避ける(不凍液や有毒植物など)。
- 獣医師の指示に従って薬を使用する。
- 感染症の予防接種を行う。
- 定期的な健康チェックを受ける。
まとめ
犬の急性腎障害は迅速な診断と治療が必要な深刻な状態です。
原因を特定し、適切な治療を行うことで、回復の可能性を高めることができます。
飼い主としては、犬が異常な行動や症状を示した場合、直ちに獣医師に相談することが重要です。
愛犬の腎臓病を防ぐための心がけ
尿を作ったり水分量を調整したりする腎臓の働きには適度な水分が必要です。
冬場でも水分補給を心掛けましょう。
また余分な塩分を排出するのも腎臓の役目です。
塩分が増えると心臓に負担が掛かるため、日ごろから人間用に味付けされた食べ物を与えるのは絶対に避けましょう。